ロースクールは法科大学院と呼ばれており、「大学院」というと「研究室にこもって研究や!」というイメージ目持つ人が多いです。
もちろん、ロースクールでも研究をしようと思えばすることができるのですが、そのような授業をあえて取ろうとする人は少ないです。
ロースクールの必修は学部生の時と同じように、学校の先生から法律学の授業を受けるというスタイルです。
ただし、そのやり方が少し学部時代とは異なり、1人の教授が半年の間、一方的に講義をする、という感じではありません。
私のロースクールでは、半年で何人かの先生が変わりばんこしながら授業をする「オムニバス形式」を採用しています。また、これはどのロースクールでもやっているであろう「ソクラテスメソッド」という方法で授業が進行していくので、先生の話を一方的に聞くという方法では授業は進行しません。
ソクラテスメソッドについては、以下の記事で色々と述べているので、こちらを見てもらえれば雰囲気が伝わるかと思います。
今回は、以上に上げた「授業のやり方」ではなく、「授業で用いる教材・レジュメ(以下、「教材」という)」に焦点を当ててお話してみたいと思います。
はじめに
先にお話ししたように、わがロースクールではオムニバス形式を採用する授業がほとんどであるため、科目ごとに、こういう教材を使って授業したよ、みたいなことが言えない場合が多いです。
先生によって違う教材を使う場合が多く、また、所属するクラスによっても先生が異なる場合もあり、結局のところ、ここで述べる話はあくまでも一例なのだという程度に読んでもらえればと思います。
ただ、なんとなくローの授業のあり方、レベル感みたいなものは伝わるのではないかと思いますので、関心のある方は最後まで目を通してみてください。
オリジナル設例集を用いるタイプ
わがロースクールでは、オリジナルの設例集を用いて授業をする先生が多いです。
このタイプは、ロー入学時に一括して前期分の設例集が配布されます。
なので、予習しようと思えば、先々まで一気に予習することも可能っちゃあ可能です。もちろん、そんな時間的余裕があればの話ですが。
ちなみに、学校オリジナルの設例集とは言っても、なにかハードカバーやソフトカバーで製本されたような大層なものではなく、A4サイズの紙を綴り合せたものでして、初めて教材を受け取ったとき、「なんかちゃっちいなあ・・・」とか感じたのを覚えています(笑)。
その設例集の中身は科目によって多少異なりますが、大きく分けると2パターンです。
1つは、事例問題集パターンです。
もう1つは、知識や概念の整理を目的とした問題集パターンです。
事例問題集の格好をとっている設例集の例ですと、民法がこれに当たりました。
4~5行程度の事例問題が5つ程度で構成されている基本的設例、見開き1ページ越えの事例問題1つに2問程度の設問で構成されている発展的設例が、各単元(売買、賃貸借、請負、委任・・・)ごとに掲載されています。
問題のレベルとしては、ほとんどは論点の確認程度のものですので、市販の事例問題集や予備校の教材で勉強してきた人にとっては、見聞きくらいはしたことのある問題が並んでいることが多いです。
知識整理型の問題集の格好をとっている設例集の例ですと、民事訴訟法がこれに当たりました。
『ロースクール民事訴訟法』に載っている事例問題を素材として、概念の基本的な確認問題(法定訴訟担当と任意的訴訟担当の違いは何ですかみたいな)から、事例問題にかかわってくるような3行程度のちょっと難しい問題、そして大学で新たに作成された新規設問(3~5行程度の短い設問であることがほとんど)が、各単元ごとに掲載されています。
問題のレベルですが、これが案外高い。おそらく、自学自習で事例問題を中心に勉強してきた人にとっては、「それってそういう概念やったんやなあ・・・」と思わされることが少なくないでしょう。先輩の評判としても、民訴テキストの難易度は司法試験を超えているとのことです。
民法と民訴は先生が変わっても、使う設例集は同じものでしたが、おそらく今私が受けている会社法の授業もそうなっています。民事系はそういう感じで行こうみたいな流れでもあるのですかね。
ただ、基本的には先生ごとで使う設例集は異なります。刑法ではそれが顕著でした。
私のクラスを担当した最初の先生は、そもそもほとんどソクラテスメソッドをしない先生でして、配られた設例集は、ほぼほぼレジュメ集みたいな感じになっていました。なので、授業はほとんど講義形式で進行していきます。ただ、やはり設例集というからには、時たまにちょっとした質問(継続犯って何ですか?みたいなものから、判決の妥当性について考えさせられるようなものまで)が掲載されてあり、これを先生が質問することがあります。
それ以降、私のクラスを担当してくださった先生方が使う設例集は、ちゃんと事例問題集でした。2人目の先生は、1ページに2問くらいの問題を各単元ごとに掲載した事例問題集を使いました。3人目の先生は、1ページに1問の事例問題、単元によっては短答式の問題が10問程度で構成された設例集でした。
市販の教科書を指定するタイプ
これまでは、学校オリジナルの設例集を使用した授業を見てきました。
一方で、普通に市販されている本を指定教科書として用いた先生もいました。
教科書を指定したのは、今のところ憲法だけです。
憲法は、『憲法判例トレーニング』という本を使って授業を行います。この本には、事案の概要と判旨が掲載された後に、ちゃんと判旨を理解しているかを確認する確認問題が1判例ごとに10問程度載っています。主にこの確認問題を先生から生徒へ質問するような形で授業を進行します。憲法の先生は3人でのオムニバス形式でしたが、3人中2人はそのようにされました(あと1人は後述)。
一方、憲法の先生は皆さん、事例問題も予習させてきたのですが、単純に『憲法判例トレーニング』に掲載された章末問題(そこまで長くはない事例問題)を指定する先生もいれば、ロースクールの定期試験の過去問を使って授業する先生、司法試験などを用いる先生と様々です。
予習用レジュメを用いるタイプ
学校から配られた教材や市販の教科書は、時間さえあれば予め先々まで予習をしようと思えばすることができます。
一方で、毎週逐一、次回の授業の予習用レジュメを公開するタイプの先生もいます。
予習用レジュメを使う先生の授業は、授業のレベル自体はもちろん他の先生方と同様に高いことには変わり有りませんが、なんか雰囲気が優しそうな先生であることが多いです(笑)
(もちろん、予習用レジュメを使わない先生でも優しい先生はたくさんいます)
例えば、憲法の先生方にもそのタイプの方がいました。この先生は、ちゃんと判例前文から、この言い回しは答案のどこでどういう順番で表現すればよいかを教えてくれる先生で、かなり評判が高いです。予習レジュメでは、「判例ではどのように述べていますか」というタイプの設問と、より発展的な設問の2種類がありますが、予習段階では前者のみやっていればOKなので、予習にもそんなに時間はかかりません。
ただし、発展的設問の難易度はそれなりに高いので、憲法大好きマンさんはそこまで手を出してみても良いかもしれません。
また、刑訴法の先生は、予習用レジュメを用いつつも学校作成の設例集である事例問題集を使う先生もいます。こちらは、事例問題の方は1ページの半分から全部にわたる程度の事例問題が各単元ごとに1~2問程度掲載されています。予習用レジュメは、判例が明言していない部分について考えさせるもの(〇〇は強制処分に当たらないとしているがそれはなぜか、みたいな)が多い印象です。
復習用レジュメが配布される
最後に、ほぼすべての先生が、授業で用いたスライドや、先生が設問で解説してくれた内容をまとめた復習用レジュメを公開してくれます。
改めて教材や予習用レジュメの問題を解くときに、分からない部分が出てきてしまったときはこの復習用レジュメを参照すればOKです。
最後に
このように、使用教材の点でも学部生の時とは違った雰囲気を感じてもらえたかと思います。
なんとな〜く、予備校・塾みたいな感じですよね。
学校の先生方は、このような表現を嫌うかもしれませんが笑笑
ただ、結局のところ復習用レジュメがアップロードされるまでは、使用教材の答えは不明なのです。
この点が、学習の効率にどのような影響を及ぼすのかは疑問があります。
問題に対して自分の頭でじっくり考えることも勿論大事なのですが、限られた時間の中で、全ての問題についてそのようにしていたら司法試験に間に合わないかと思うのです。
ただ、使用教材は毎年同じなので、前年度に配布された復習レジュメ先輩や留年したクラスメートなどから先んじて入手することも可能です。そうすれば、予習に時間をかけ過ぎる、なんてことは起こらず、学習の効率を上げるかもしれません。
しかし、学長はこれを禁じています。理由は、「学習に悪影響を与えるから」とのこと。
そうかな??と僕は思いますけどね。
以 上
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