ロースクールに通いながら司法試験合格を目指そうと考えている皆さん、そしてロースクールの合格が決まった皆さん、こんにちは。
皆さんは、ロースクールの学校説明会を受けたことがあるでしょうか。そこでは、皆さんをロー入学へと動機付けるために、次のような情報を聞いたはずです。
「ローの授業成績(GPA)と司法試験合格率は相関関係があるんです!」
「例えば、成績上位50%に当たるGPA2.94以上だと司法試験合格率が80.6%で、上位33%に当たるGPA3.09以上だと合格率90.5%で・・・」
「なので、法科大学院の授業が合格のための力を鍛えるんです!」
こんな話を聞いて、皆さんは次のように思ったのではありませんか?
「GPA2.94くらいだったらまあイケそうだな!合格待ったなしだ!」
「何やらローの授業は素晴らしそうだぞ!」
しかしそこには、語られざる闇が存在しています。
今回は、ロースクールの先輩方やクラスメートが教えてくれた実話も紹介しつつ、「ローの成績と司法試験合格率との相関」に隠された闇を紹介します。
そもそも留年率が高い
わがロースクールの前年度の留年率は約3分の1です。なんなら、今年度の留年率は2分の1にも迫ろうかという勢いとなっています(これは、今年度の入学者が非常に多くなったことも影響している)。
わがロースクールの進級要件は、GPA2.0がボーダーになっているのですが、昨年度は3分の1の人がこれに届かなかったのです。
そして、「成績上位50%に当たるGPA2.94以上だと合格率が80.6%で、上位33%に当たるGPA3.09以上だと90.5%で・・・」を説明する際に学校側が用意したスライドをよ~く見てみると、こんな注釈が書いてあったはずです。
「休学、原級留置者を除く」
つまり、「成績上位50%に当たるGPA2.94」というのは、「GPA2.0に至らなかった約3分の1を除いた生徒たちの中で、成績上位50%」ということになるので、実際にGPA2.94をとるには、全生徒の上位33%に到達する必要があるんですよね。
同じく、「成績上位33%に当たるGPA3.09」は、実際は全生徒の上位22%に到達する必要があるのです。
「成績上位50%に当たるGPA2.94で司法試験合格率80.6%」なんて聞いたら、「司法試験なんて楽勝やなあ!」と思ってしまいますが、実際は全生徒の上位33%であるという真実(そして留年率が約33%という真実)が巧妙に隠されていたのですね。
定期試験のレベルが高い
そうは言っても、留年のボーダーはGPA2.0です。学部生のころの成績を考えれば、そこまで高いラインではないようにも思えます。
しかし、現実は約3分の1が留年しているのです。それには訳があるはずです。
その理由は言わずもがな、定期試験のレベルの高さにあります。
ローの定期試験は、1科目120分の論述解答式の事例問題であることが多いはずです。その問題の難易度は、司法試験レベルとまではいかずとも、それに近しいようなレベルになっています。
さらに、試験範囲はその科目の全範囲であることがほとんど。
つまり、試験問題は難しく、試験範囲は広い。
すると、学部生のころと同じ感覚で勉強していては、とんでもない成績をとることになります(実際に筆者がそうでした)。
「GPA2.94くらいだったらまあイケそうだな!合格待ったなしだ!」ということは絶対にありません!
それどころか、留年の危機すら間近に迫っているのだという危機感を持っておく必要があるでしょう。
授業の復習だけでは良い成績は無理
先ほども述べたように、全範囲を試験範囲にする科目が多いのですが、では、それをたった14~15週の授業で網羅できるのか?という疑問が浮かびます。
答えは、イエスともノーとも言えます。
まず、全範囲を網羅する授業は、基本的に事例問題を扱うことは少ないです。(したがって、予習の段階では知識を頭に入れておけば足り、予習の時間的負担やソクラテスメソッドの心理的負担は少ない。)かたや、事例問題を自主的に解いておく必要があり、授業で教わった知識を使える状態に仕上げる必要があります。
一方、全範囲を網羅しない授業は、事例問題を解いていく方式で進行します。(したがって、予習の段階では知識を実際の事例で使えるくらいには落とし込んでおく必要があり、予習の時間的負担やソクラテスメソッドの心理的負担は大きい。)かたや、授業で扱っていない単元は、自学自習で補わなければなりません。
このように、授業で試験範囲を網羅しようがしまいが、どうしても授業の復習以上の自学自習を要求される場面が出てきてしまいます。
ある先輩の話では、授業の復習をほとんどせず『アガルートの重要問題集』を解きまくって成績Sを取った、とのこと。
つまり、「何やらローの授業は素晴らしそうだぞ」という考えはやめましょう。ローの授業の復習だけでは不十分です。
最後に
このように、学校説明会で語られた内容というのは、入学者を増やそうというビジネスと、法科大学院の授業だけで足りるのだとする反予備校主義とが織りなした、意図的な情報操作が行われているということができそうです。
もしあなたが、これから法科大学院の入学を考えていて学校説明会を受けるようなことがあれば、「美味しそうな情報には何かがあるぞ・・・?」と疑ってかかってみると良いかもしれません。また、学校説明会で質問する機会があれば、近年の留年率について質問してみましょう。
もうロースクールに入学することが決まった皆さんは、学部生と同じ感覚で勉強していてはいけません。大学4年生のこの時間があるうちに、事例問題にあたりながら知識を使える状態に少しでも持っていけるようにするとよいでしょう。また、ローの定期試験のレベルを考えると、司法試験や予備試験の過去問も今のうちに触れておいた方が絶対に良いです。特に、前期で履修する科目(わがローでは、前期の必修として債権各論・刑法・憲法・民事訴訟法)から優先的に勉強してくださいね。
それでは、ご武運を。
以 上
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