ローでの民法「94条2項類推適用」

94条2項類推適用は、大体予備校が出している市販の参考書なんかだと1問目とか2問目くらいに出てくる問題なわけでして、

多くの人が学部生1年目の4月に着手したことのある論点なのではないでしょうか。

私も、「94条2項類推適用」というワードを聞くと、まだ大学に入学もしていなかった3月、右も左も分からないまま民法総則を独学し始めたころの記憶が蘇ります。

今回は、ロースクールで学んだ94条2項類推適用について、答案を書く際に気を付けようと思ったことを書いていきたいと思います。

94条1項が先出しされている必要はない

そういえば独学で勉強していたころ、答案を書く際に94条2項類推適用の前に、94条1項類推適用は必要ないのだろうか、と思っていたころがありました。

しかし、答案例を見れば、そんな必要はないということは一目瞭然でした。

でも、なぜ必要ないのだろうか。

その疑問を長らく放置し、ついには忘れてしまっていました。

今回、ローでの授業で、その疑問は解決されることになります。

そもそも、94条2項を類推適用したい場面というのは、虚偽の外観を作出したという帰責性が表意者にあるというのに、第三者が保護されえないという悲しみの状況の中で、この第三者を保護していきたいという場面です。

そこで、94条2項に横たわる法理(権利外観法理)の考え方を借用して、類推適用でこの場面を解決していくのでしたね。

そう、我々が借りてくるのは、94条2項の法理です。法理だけ借りてくるので、94条1項の話が先行しているとかいないとかは関係がありません。

権利外観法理の考え方だけを借りてくるのですが、その考え方はどこに横たわっているかと言うと、94条2項だった、というだけのことです。

なので、94条1項類推適用を先出しする必要はありません。

外形他人作出型のキーフレーズ

勝手に他人が作出した虚偽の外観を知っていた本人であったが、その後も是正することなく放置していたような場合の事案です。

虚偽外観が作出されたという時に、その外観を自ら作出した場合といえるなら、やはり本人の帰責性は大きいわけですから、権利外観法理との距離はかなり接近しています。

ところが、その虚偽外観を他人が作出した場合には、少なくとも直接的に外観作出に関わっていない本人に対して、権利外観法理を類推していくには、すこし距離があると思います。

それなのに、虚偽外観作出と本人の帰責性(と第三者の信頼)に触れて、94条2項類推適用をしますと宣言してみても、なんだかなあという。

これについて、判例(最判昭和45年9月22日)の言い回しを参考にして、次のようなフレーズをかませてあげる。

本件は、虚偽外観があることを知りながらこれを存続させることに明示又は黙示の承認を与えていた場合にあたり、虚偽外観作出に本人の影響力が及んでいたと言えるので、帰責性が肯定できる。

判例では、他人が作出した虚偽の外観を、単に知っていたというだけでなく、これに承認を与えていたと言える状況であって初めて類推適用を認めたと読めます。

承認という本人の関与があることをしっかりと述べることで、外観作出の帰責性を本人に負わせることができるという結論を自然に述べることができるのですね。

外形与因型のキーフレーズ

不用意に登記済証や印鑑登録証明書を他人に渡してしまったところ、その他人が勝手に虚偽外観を作出した事案です。

このような場合にも、「原因を作り出した点で本人の帰責性がある」と言えばそれはそうなのですが、やはり積極的に虚偽外観を作出したという程度の帰責性とは距離があるので、書きぶりを工夫しましょう。

これについて判例(最判平成18年2月23日)の言い回しが参考になります。

虚偽外観の作出は、本人のあまりにも不注意な行為によるものであるから、帰責性の程度は、積極的に虚偽の外観を作出した場合や、虚偽の外観を知りながらあえて放置した場合と同視できる。

こう見てみると、判例って言い回し一つ一つ考えて書かれているのだなあと思います。

ちなみに、外形与因型は、94条2項と110条の類推適用になっている点は忘れてはいけませんね。

110条の法意?110条の類推適用?

ところで、外形与因型では94条2項、110条の類推適用でしたが、意思外形非対応型(本人がした仮登記を他人が本登記にして虚偽外観作出した事案など)では、「94条2項、110条の法意に照らし」(最判昭和43年10月17日)と言っています。

これについては、ローの先生いわく、法意でも類推適用でもどっちでもよいとのことでした。

というか、そこで「う~ん、どっちだったっけ」となるくらいなら、もっと他に欠くべきことを書きましょうということでした。

ちなみに、94条2項と110条の合わせ技の類推適用なので、94条2項類推適用と110条類推適用と別々に書くと、それは間違いだよともおっしゃっていました。

以 上

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